お正月⑨

里菜が死んでしまうから。という妻の言葉だけが頭に強く残っていた。冬は寒い。里菜はひとり暮らし。仕事から帰って来れば。疲れてしまう。誰も居ない部屋でどれだけ長い時間過ごしたのだろうか?それを考えると不憫で仕方がない。やっと夢がかなったのだから。彼が出来た。彼が部屋に来てくれた。寂しくて死んでしまうような。そんな時に彼が一緒にいてくれれば安心できる。里菜は彼といる時が一番楽しいのだから。そんな楽しい時間は少ない。人生は短い。特に楽しい時間は少ない。二人の邪魔をしたりしない。今が一番楽しい時間なのだから。仲良くしていてね!パパは何にも言わない。二人で一緒に楽しくしてくれるだけでいいよ。藤岡市に戻るとか桶川市にお嫁に行くとか。川越市にそのまま住むとか。それは二人で相談して決めればいいよ。お爺さんもパパはもう先が無いから。マンションが買いたければ。お金も出してあげる。でも質素が良ければ。アパート住まいもよし。必要ならば僕のあるゆるものなんでもあげるよ。里菜は僕の宝なのだから。